春になり、
春が来た。今年も春が来た。様々なところで花が咲き、街が明るくなる。今年は久方振りに花
見をして桜を愛でてみたりした。
毎年この時期が来ると、何故だか文房具を買いたくなる。新学期のせいだ。鉛筆、筆箱、ノー
トなどを新しくしたくなる。そんな訳で一つ文房具を買った。勿論骨董品のお話。
学生の頃私は京都で寝起きしていた。その日は友達と飲み明かした勢いに、春の陽気も手伝
って京都観光へと繰り出すことにした。なかなか行かないところへ行こう、そんな提案で黄檗山
万福寺へ。黄檗山はインゲン豆の隠元さんが開祖で、売茶翁などが出た由緒正しきお寺であ
る。勿論煎茶との繋がりは深く、中国趣味溢れるお寺で、なかなか面白いところだった。男三
人で墓を見たり、木魚を叩いてみたりと、なかなか風雅な時間を過ごした。
今回手に入れた文房具はその黄檗山の瓦で作られた瓦硯である。細かい時代まではわから
ないが、流石は黄檗山、煎茶の源流にして文人趣味あふれる文房具だと思わせる雰囲気を持っ
ている。硯は文房四宝の一つでもある。自らを汚されることによって初めてその価値を引き出すも
のだ。自らが雨風に晒される事によって初めて意味があった瓦の時代と変わらず、己の身を呈し
て新たな価値を見出している。
うららかな春の日差しを浴びながらこの瓦硯で墨をすり、俳句の一つもひねってみるのは如何だろうか?
by harakobijyutu | 2009-04-14 21:12