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鉄斎

 僕は毎月6.7日と大阪へ買い付けに行っている。いつ行っても緊張感がある場所で、自分としては嫌いではない。今回は下見の段階で鉄斎を発見。状態はすこぶるいいし、物も間違いないと自身の持てる物である。ホテルに帰り独り値段を決める。この時間は非常に好きだ。
 
 いざ本番である。大阪は日本一セリが速いところで、一つの物が大体10秒も掛からずに決まる。そのためよそ見はできない。僕のようなものは売り番が近づいてくるだけで心拍数が上がり始め、それはもう言葉では云う事の出来ない緊張感が体に巻きつき、いつも肝心な時に声が上ずったり、出なくなったりする。しかし今回は鉄斎である。僕は昔から鉄斎が好きで、一度扱ってみたいと、一人勉強を重ねていた。おまけに今回のは自分自身腹に入っているほどに自信のある物だ。

 退くわけにはいかない。

 頭の中で何度かつぶやき、いよいよである。
「はい、これ鉄斎~万円から!!」
「~万円!!、~万円!!」
 値段は予想どうり凄い速さで上がる。緊張のピークである。

「~万円!!」
 僕は自分の決めていた最高金額を叫んだ、


が、

「五万円!!」
 一瞬にして上が来た。(この五万円はプラス五万円、という意味です。)
 するとまた次の瞬間
「~万!!!!」
 僕の二人前の席に座っている人が乗ってきた。

そして一瞬空気が止まった。交換会ではよくあることだ。大体この次の瞬間決まる。つまり僕の二人前に座っている人の所へ落ちる。よくあることだ。やっぱり、鉄斎は高い。僕のような若造が買うにはまだ早い、、、、、、

「五万円!!!!」
 止まった空気を切り裂くように、ここを勝負と僕は声を上げた。

「~万円で原さん。」

落とした。この僕が鉄斎を落とした。少し自分でも驚いた。いつもなら完全に退いているところを、設定より高すぎたとかなんとか自分にいいこと言って退いていたところを落とした。何とも言えない感覚が体を駆け抜ける。 

 それからすぐに今度は言いようのない不安が襲ってくる。果たして自分の買った値は高すぎやしないか?そもそもこの鉄斎、物は良いのだろうか?次々に善からぬことを考える。その時後ろから一人の先輩に声をかけられた。
 「えーもん、買うたなあ」
 嬉しかった。不安も消え、本当にホッとした。
 店に帰り、社長に見せると、社長も
「こりゃあ、ええ鉄斎じゃのう。」
 と云う。

あー本当に良かった。気になる人がいれば連絡ください。

by harakobijyutu | 2007-12-17 18:05